交換日記

好き² と 有島みこ の交換日記です。

交換日記⑦ からだとこころ

好き²さんへ

 

こんにちは。最近はちゃめちゃな日常を送っている有島みこです。

 

『トロムソコラージュ』読んだことがないので気になりました。

私は詩人だとR・D・レインが好きで、ウィリアム・ギブスンの「THE BELOVED」という詩が最も好きです。岡崎京子の『リバーズ・エッジ』でも引用されているとても有名な詩です。全文覚えていて、ふとしたときに暗誦しています。

短歌は、とりたてて好きな歌人がいるわけではないのですが、初期の黒瀬珂瀾の歌は好きです。

いまさらにエヴァ本を買ふ冬晴れのひとひの梅の幹の黒さ、か - 『tometo,that's going bad 先師の記憶に添えて』

桜前線開架宣言』や、最近出版された『はつなつみずうみ分光器』などの解説付きでたくさんの歌人を紹介する本だとお気に入りが見つかりやすいのでおすすめです。

 

最近は佐々木敦を読みまくろうと思っていて、『ニッポンの文学』『私は小説である』を買いました。取り敢えず『ニッポンの文学』を読み終え、その持論を排して分かり易さにこだわっている文学論に感嘆しました。特に芥川賞直木賞の受賞作から現代文学史を紐解こうとする章が面白かったです。『私は小説である』の方は、サミュエル・ベケットから始まり、小説が含む私小説性について検討した論考のようなので、気合を入れて読みたいと思います。

 

罪と罰』、私も高校時代に読みました。AO入試で大学が決まった10月頃、授業を受ける意味が分からず、始業時間になっても駅で読んでいた覚えがあります。そのせいか『罪と罰』そのものが、私の中では、秋の潮風の感じや時折する轟音と分かちがたく結びついています。

 

『空気人形』、ちらりと観た覚えはあるのですが、あらすじをお聞きして、そういう話だったのか、と思いました。

私じゃなきゃだめなことを私がするのは当たり前だから、あなたの代わりはいくらでもいると言われてしまっても、その場所こそ居場所になる可能性がある

すごくいい感想だと思います。

 

ノマドランド』という映画を観ました。アカデミーを獲った作品です。ノマドという車上暮らしを続けるアメリカの高齢者貧困層にスポットを当てたドキュメンタリー風の映画なのですが、これがとてもよくて、かなり泣いてしまいました。

死について扱う映画は星の数ほどあります。その多くは、逝く側にフューチャーしていると感じるのですが、『ノマドランド』は遺されたり死にそびれたりした側の物語で、そこが胸をついたのだと思います。

たとえ心の方がどうしようもなく成熟しなかったり老成しきったりしても、身体が終わらなければ死んだことにはなりません。逆に、肉体の苦しみがその人のポリシーを超越してしまうこともゆうにあります。その途方もなさに呆然としてしまいました。

 

 

段々と夏の気配が忍び寄ってきておそろしいような気持ちです。

それではまた、お返事お待ちしています。